僕が職業としてエンジニアになったのは 2019 年だ。 それまでにも Web 制作やデータまわりの仕事はしていたけれど、 本格的に「エンジニア」と呼ばれるようになったのはこの 6、7 年の話だ。
なってみて最初に驚いたのは、 中にいる人たちの"自由さ"だった。 朝起きられない、会議に出忘れる、時間どおりに来ない。 他の職種ではあまり見なかった光景が、ここでは日常だった。 それでも仕事は回る。 Google の福利厚生を見ても、ランチも長い休暇もある。 本当に恵まれた職業だと思った。
でも、それだけに僕たちには「エンジニアの義務」があると思う。 なぜなら今、世界は一気に反転し始めているからだ。 AI の登場で、大量解雇が現実になった。 日本では雇い止めという形が多いけれど、 根っこは同じだ。 人間の「ムラ」を AI が消していく。 朝起きられないとか、集中できないとか、そういう揺らぎを AI は容赦なく埋めていく。
Claude Code や Cursor を見ても、もう明らかだ。 人間より早く、ムラなく、休まず動く。 だからこそ、エンジニアたちはそれを知っていて、 996 文化のような過剰な働き方が生まれる。 誰も責められない。 でも、それが人間の幸せに繋がっていないことだけは確かだ。
全体の給与水準で見れば、エンジニアはまだ恵まれている。 経済的なアービトラージを狙うなら、今も十分に稼げる職だ。 ただし、それは「幸福」とは別の話だ。
昔のエンジニアカルチャー—— 夜通しコードを書いて、仲間と笑っていたような時代は、 もう AI によって壊れた。 いま残っているのは、効率の向こう側に立たされた人間たちの、静かな空白だ。
その空白をどう埋めるか。 それが、これからのエンジニアの仕事なんだと思う。