AI商品の宿命

2025/10/7

ClaudeのDario Amodeiが言っていた。 AIの精度が90%から95%に上がっても、 一般のユーザーはその5%の違いに気づかない、と。

でもB2Bの世界では、その5%がとてつもなく大きい。 製造業なら歩留まりが改善し、利益率が跳ね上がる。 コーディングでも、5%速く、5%少ないバグで仕上げられたら、 それはもう人間が体感できるレベルの進化だ。 つまり——AIの精度向上は、**一般消費者ではなく企業のために起こる**。

実際、僕自身もB2BのAI SaaSを作ってきた中で、 その5%の精度が経済的リターンに直結することを何度も見てきた。 だから、今後AIの開発競争は間違いなくB2Bに集中する。 SMBや個人には、そこまでの違いは届かない。 大企業の周りに、無数のAIベンダーが群がる。 そこに資本が流れ、開発が過熱し、競争が加速していく。

けれど、これは宿命だ。 AIによって価値が証明された市場は、 AI自身によって最も早く**価格破壊**される。 コンペティターは一気に増え、 どの企業も似た精度、似た価格、似た言葉を並べる。 差分は消え、利益率は下がり続ける。

やがてこの市場では、「どれだけ早く人間をAIに置き換えられるか」が 唯一の競争軸になるだろう。 エンジニアは需要が増えたように錯覚するが、 その需要の中身は、**AIを作るAI**に支えられている。 供給が人間の手を離れた瞬間、 人の体と心がそのスピードについていけなくなる。

僕が心配しているのは、そこだ。 5%の効率化を積み重ねることで、 人間の余裕が5%ずつ削られていく。 AIが進化するほど、エンジニアの精神は薄く延ばされ、 やがて透明になる。

AI商品の宿命とは、 精度を上げるたびに、人間の心を少しずつ削っていくことだと思う。 その先に残るのは、 完璧な成果物と、誰も覚えていない制作者だけだ。

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