ここ数年で、AIや自動化の話題があふれている。 でも、実際に中小企業が次にぶつかる壁は、AIではなく"データ"だと僕は思っている。
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これまで僕は、いくつもの事業をゼロから立ち上げ、 数百万ドル(=数億円)規模までグロースさせてきた。 EC事業も、SaaSスタートアップも。 けれど、どのフェーズでも共通して現れる課題がある。
それが、スプレッドシートの限界だ。
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事業が成長して、年商が数百万ドルを超えてくると、 売上や在庫、広告、顧客データ、決済データ…… すべての数字がバラバラに積み上がっていく。
最初はGoogleスプレッドシートで何とかなる。 でも、少し規模が大きくなると、 それはもう人間の目と手では追いきれないノイズになる。
しかも日本企業の場合、大企業ですらExcel管理が主流だ。 担当者が毎日手作業で数字を張り合わせて、 「どうにか整合性を保っている」だけ。
これ、見た目以上に苦痛な仕事だ。 人の手で数字をコピーしながら「生産性を上げよう」と言ってる。 矛盾してるよね。
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だからこそ、今必要なのはデータエンジニアリングの導入だと思う。 特にキーになるのが、DBT(Data Build Tool)だ。
DBTは、いわばデータのクレンジング担当エンジニア。 散らばったデータを吸い上げ、 クリーンな形に変換して、AIやBIツールに食べさせる。
AIは、正しいデータを与えられた時にしか正しく動かない。 だからこそAIより前に、データパイプラインを整える必要がある。
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例えば、営業施策を最適化したい。 財務チームがリアルタイムにキャッシュフローを見たい。 AIで予測したい。
でも、そのどれもが「まず正しいデータが存在すること」を前提にしている。 AIが魔法のように見える時代においても、 実は最も人間的で地道な部分—— "データをきれいにする"作業が、すべての基盤になる。
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今後、中小企業が人を雇い、 事業をスケールさせていこうとするときに直面するのは、 資金でも採用でもなく、データの構造化だと思う。
AIは「使う」ことよりも「食べさせる」ことの方が難しい。 スプレッドシートを卒業して、 DBTのようなツールで人間が理解できるデータを作る。 それが、中小企業がAI時代を生き抜くための第一歩になる。